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楼閣人物堆朱稜花盤 2007年12月16日(日)更新

楼閣人物堆朱稜花盤

【和:ろうかくじんぶつついしゅりょうかばん
【中:Lou ge ren wu dui zhu ling hua pan
明・清|彫刻・書画>楼閣人物堆朱稜花盤

「大明永樂年製」銘
木製漆塗
高3.0、径18.8
明・永楽(1403~24)
上海博物館
 明時代(1368~1644)は漆工芸がその爛熟期をむかえたときであり、数々の名品を産み出した時期である。とりわけ、明時代初期の永楽期(1403~24)と宣徳期(1426~35)は、その活動がいちだんと活発におこなわれた期間としてよく知られている。
そして、この時期の漆芸活動において、もっとも刮目される点は、漢時代以後ながく、はっきりとは確認できなかった官営工場がふたたび登場してきたことであろう。漢時代には官営工場が営まれ、その厳しい監督のもとで漆器が制作されていた。それ以後、明時代にいたるまでのあいだは、たとえば、賦与税の使役として工人が漆器制作にたずさわっている場合などを考えれば、官営工場の存在を予想できるが、多くは民営の工場でつくっていたのがどうやら一般的であったようで、実際に制作された作品を見ても、そこには工匠の名前がしるされており、いわゆるオフィシャルの年紀のはいった銘は見出されない。ところが、明時代初頭の永楽期になって、宮廷用品を調達する漆器の官営工場が設立され、おびただしい数の漆器を生産するようになった。この永楽期の官製作品をみると、これまでのところ、それらは彫漆器のみであり、それも堆朱の作品に限定されているといってよい。
この盤はまさに、そういった作品のひとつであり、その時期の堆朱の作風を如実に示した格好の作例である。器のかたちを六弁の稜花形につくり、低めの高台をもったやや小ぶりの盤である。見込みには、 一人の高士が杖をもつ従者とともに家に赴く図をあらわし、立ち上り内外面には、椿・牡丹・蓮花・菊など六種の四李の花を配している。この立ち上り内外面の地は黄漆地としているのみであるが、見込み部は、その狭い空間にもかかわらず、そこに人物・屋体・松樹・岩石・花・雲といった文様をいっぱいにたたみこんでいるうえに、地には花入り斜格子・波・霞の三種の細かい地文を一面にほどこしている。そして、いずれもが入念にきっちりと表現されており、そこからは二人の並々ならない技術がよくうかがえる。さらに、文様についていうと、屋体内の人物の背後にみられる花入り七宝繋ぎ文はひときわ注視されるものである。これは永楽期の堆朱作品にあっても、なかなか見うけられない類いの文様であり、はなはだめずらしいものといってさしつかえない。
永楽期の堆朱器を総じてみると、文様はあらかた、楼閣人物・龍・鳳凰・花文などに集中しており、なかでも、めだって多いのは楼閣人物と花文である。その点からいえば、この盤は決して稀有の作品ということにはならないが、いくつかある永楽期の堆朱作品のタイプのなかにあっても、これは高い完成度をみせた種類の作品に属すもので、この時期の堆朱器のなかではいたって高く評価できるものである。
底裏は茶味をおびた黒漆塗りで、その左方には「大明永樂年製」の六字が楷書体で刻されている。この刻銘は針のような細いものでほどこされた銘で、刀で彫った太い書体の銘とは異なり、一瞥では見すごしてしまういわば隠し落款風の小さな銘である。そして、永楽期の官製の堆朱器には、これと同様の針刻銘がほどこされているものが多くみられ、器物にこの種の銘をいれることがならわしになっていたことがみてとれる。その場合、銘はわずかな例をのぞくと、この盤と同じように、器皿底裏の左方の縁近くにいれるのが通常である。出所:「上海博物館展」

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