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漆豆 2008年07月17日(木)更新
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木製漆塗り
通高28.3cm、 口径21.6×17.3cm
まるで、青銅器を思い起こさせるようなこの蓋つきの漆豆は東室から出土したもので、これと同様のものは、このほかに東室から3件が伴出している。そのなかでも、これはすばらしい保存状態をみせたものとして知られている作品である。
蓋以外の豆盤部、耳部、脚部および台部の四部すべてはいわゆる一木造りで、ことに、この漆豆で目をひくのは何といっても、その耳部にほどこされた細緻な彫刻であろう。これと同じ巧緻な技術を駆使した彫刻は蓋表の中央部にもみうけられ、こうした点はこの作品の大きなみどころのひとつとなっているが、蓋表と耳部に彫り出された複数の龍が絡みついているさまはまさに、真にせまるものであり、それらは当時の工匠たちのすさまじい技術の真髄をありありとみせつけている。
蓋の裏面と盤の内面をのぞいて、器体にはいずれも黒漆を塗り、蓋表には中央に蟠虺紋、その周囲に方形状の窓を8箇所におき、そのなかに雲紋、そとに雲紋や幾何風の紋様などをあらわしている。この蓋表で注目される点は雲紋が彩漆で描かれているのではなく、刀刻された線であらわされていることであり、この手法は曽侯乙墓から出土した漆器類のなかでも、桶や禁とともにきわめて特異な存在となっている。
豆盤部は、上方に大きめの菱つなぎ紋帯をめぐらし、その内外に風変りな雲紋をあらわし、その下方には、上下にやや小ぶりの菱つなぎ紋帯をまわし、それらのあいだに、細かい格子紋を地紋として変形の鳳凰紋を描いている。また、裾すぼまりとなっている脚部にはいくつかの段をつくり、それらの各段に雲紋や菱つなぎ紋といった紋様をあらわしている。そして、おしつぶした八の字のように極端に低く、安定感のあるかたちをした台部には、 中ほどに特異な幾何風の紋様帯をまわし、その上に変形の鳳凰紋、下方にも特徴ある鳳凰紋を描いている。これら豆盤部、脚部および台部の紋様描写のなかで特記されるものは豆盤部と脚部にみられる菱つなぎ紋帯と、台部の外縁にあらわされた鳳凰紋であろう。これらの紋様はともに、地となる部分を朱漆で塗りつぶして表現しており、紋様を描線であらわす通常の手段とはちがっている。紋様はおおむね、朱漆を用いてあらわしているが、随所に金、 もしくは黄漆のようなものも使われていたようである。
いずれにせよ、この漆豆は曽侯乙墓から出土した漆器中、もっとも手のこんだ、みごとな出来栄えを示した作品のひとつであることにはまちがいなく、同時に、戦国時代の漆器を代表する屈指の作品でもある。出所:『曾侯乙墓』
特別展 日中国交正常化20周年記念
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