考古用語辞典 A-Words

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観音菩薩立像  2008年09月25日(木)更新

観音菩薩立像
【和:かんおんぼさつりつぞう
【中:Guan yin pu sa li xiang
隋・唐・五代|彫刻・書画>観音菩薩立像

木造
高120.0
晩唐~五代
 敦煌には数は少ないが木彫仏像の遺品も見出されている。窟前にしつらえられた木造の殿堂などにまつられることがあったのであろう。本像もその一つで、他にペリオが入手した十数体の木彫像がいまギメ美術館にある。
この像は楊柳の一材から頭体を彫出し、両腕を肩で矧付け、両足枘で台座に立つ。頭部は焼損して面部だけが残り、体部と離れて別に保管されていた。体部背面にも焼損の痕が著しい。腕はいま左の二本と右の三本(内一本は上膊のみ)が残るだけだが、左腕二本の後側に一本、また両肩の後から左右水平方向に各一本の腕をとりつけていた痕がある。もと八臂の像であったと知られる。莫高窟壁画やスタイン・ペリオ請来の敦煌画に見る八臂の像としては、十一面観音と不空羂索観音があるが、この像には不空羂索観音のつける左肩の鹿皮がないから、もとは八臂の十一面観音像と考えてよい。敦煌の絵画遺品を参照すれば、左右の四臂の向きはほぼ相称であったはずで、胸脇左右に挙げた真手は蓮華を執り、失われた左右第一手は高く挙げて右に日輪、左に月輪を捧げていたと見てよい。今残る左第二手は前にさし出して棒状の持物を握る形、右第三手は垂下してやはり持物(羂索か)を握る形をするが、第二・三手については敦煌画でも持物は一定せず、この像の場合も特定できない。
敦煌両には六臂あるいは八臂の十一面観音像(これらの形は儀軌に説かれない)が多いが、それらはおよそ五代を中心とした時期の製作である。本像は胸飾りをつけ、瓔珞を胸から脚部にかけてX字形にかけ、裙と下縁に襞飾りをつけた腰布をつけ、腹前で紐を大きく花結びにしているが、この形も晩唐以降の敦煌画菩薩像に多く見るところである。また条帛に弧状衣文を並列するのは、晩唐以降の塑像や木彫に類例がある。なおギメ美術館にある木造八臂十一面観音立像は、やはり条帛に孤状衣文並列があるが、八臂の向きや着衣形式、全体の作風は本像とかなり異なる。 一方、同館にある腕を失った木造菩薩立像は、着衣の形式、さらに両肩から垂れる瓔珞を腹前で四角い金具に通し、金具の左右に一度出してまた戻し、再び金具を通して垂下させるという特殊な形まで本像とよく似ている。しかしこれらと較ベて本像は、均斉のとれた堂々たる体躯を持ち、彫りに粗さはあるもののもっとも力強く、すぐれた作域を示している。出所:『砂漠の美術館-永遠なる敦煌』中国敦煌研究院設立50周年記念