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菩薩立像幡 2008年09月30日(火)更新
絹本着色
縦84.8 横17.9(絵の部分)
盛唐
東京国立博物館
右前方を向いて円頭光を負うこの菩薩像は、腹前の右手に左手を重ねて、蓮台上に立つ。画面は、全体に淡い彩色で仕上げられている。頭上には、霊芝雲がわきたっている。淡い朱暈で肉体を立体的に表現するのに対し、着衣部分には下描きの線をそのまま残す彫り塗り技法が見られる。幡身部分の上下端にそれぞれ装飾帯が三段と一段描かれている。頂部の裂には、懸垂用の吊り輪(内径〇・九センチ)が固定され、往時の使用法を想像させる。円条の幡脚は、幡身部分と同じ幅の紺色の平絹に切れ日を入れたもので、下端には絹の表面に油を塗った台形の重し板が取り付けられている。幡身部とほぼ平行して伸びる幡手の先端など数力所に、絹糸を束ねた当初からの房飾りが残っている。暈や繧繝彩色などには、盛唐仏画の片鱗がうかがえよう。
幡は、仏教儀礼である行道の通り道の両側や法要が開かれる庭などで竿などの先瑞、あるいは荘厳の目的で仏殿内外の柱や仏像の天蓋などの構造物に取り付けて用いられる。幡頭、幡手、幡身、幡足および木製の重し板のすべての要素を完存するこの絹本着色幡は、まれに見る保存状態のよさをしめしており、大変貴重である。
この作品と同一の粉本(下絵)によって描かれたと考えられる菩薩立像幡があと二点ペリオ・コレクション中にあり、図様によっては量産されたこと、また細部の表現や色彩については画家の自由裁景に任される部分があったことなどがわかる。銘文欄や尊名を記す短冊型が空白のまま残る敦煌莫高窟蔵経洞出土の絵画類が、各地に多数存在するのは、注文を見越しての制作であったことを物語っている。出所:『砂漠の美術館-永遠なる敦煌』中国敦煌研究院設立50周年記念
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