水盂　2009年7月10日更新

注水具。文字の成立原理を六種に分類して字源を究明したのは後漢の許慎である。その者『説文解字』は文字学の原典とされる名著でA・D１〇〇年頃には完成していたと言われる。この六分類を六義と言う。象形、指示、会意、形声、仮借、転注である。
文字成立とともに文字を学習することが起こる。筆、墨、紙、硯のない時代から土や砂に書いて学習しただろう。学書した跡を辿れるのは既に述べた漢―晋代に及ぶ木簡の敦煌簡、居延漢簡であり、著録としては後漢の趙壹の『非草書』である。
学書は筆、墨、硯、紙（竹・木簡、帛）が座右にあって可能となる。次に求められるのが水である。墨を磨る度ごとに水を求めるのは水に乏しい中国では不便である。水を貯えて置く必要がある。四宝に続いて文房用品として求められたのが注水、貯水の用具だったと思われる。注水の道具を挙げると、筆洗、筆覘（点）、水中丞（水丞）、水盂、水注、水滴の別がある。筆洗、筆覘、水丞を総称して水盂とも言っている。
玉（珪）：紅玉、紅白玉、白玉、青玉など玉製品は多い。ほとんどが清朝乾隆期以後のものである。翡翠に逸品がある。
石：端渓石、黎渓石、菊花石などのものがある。端渓石の眼を生かしたものは喜ばれている。
陶磁：古例はあるが宋以前のものは少なく過眼も難しい。明末から清代にかけてのものである。哥窯、均窯、祁窯などのものがある。白高麗と称するものも見たが、恐らく李朝代のものであろう。杯の転用とも思える。
牙角：象牙、牛角、犀角で作ったものである。坏（觴・盃）であったものを流用したのではないかと思われるものもある。
木：紫檀、墨檀、紅木などの重い材で作っている。木根を使ったものも起きがある。
金属： 銅に金、銀の象嵌をしたものが多い。銅は水を腐らせないので喜ばれたのであろうが、手入れを怠ると鈴が出る。錫、鉛、金などを加えて合金にして使ったようである。金との合金の赤銅が愛玩された。 明代中期の宣徳時代は銅製品が盛んに作られた。日本にも多く舶載し、銅火鉢にはセントクの代名詞があるくらいである。水孟も古ある。銅製のものは少ないが、江戸時代に舶載したかと思われるものを時々過眼する。陶瓷製では筆立てを兼用させたもの、筆架を兼ねたものなど変った水滴がある。出所：『文房古玩事典』宇野雪村
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