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サキャ派ラマ 2009年10月9日更新
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チベット中央部
15世紀後期-16世紀前期
綿布着色
92.7×80cm
シェリー&ドナルド・ルビン・コレクション
目の眩むような赤い衣と帽子をまとったサキャ派のラマが、説法印を結んで座っている。両肩越しに伸びた蓮華の上には金剛杵と金剛鈴が載り(像主比定のひとつの手掛り)、顔をやや横に向けている。このラマはおそらくゴル寺を創建したサキャ派の高僧ゴルチェン・クンガ・サンポ(1382-1457)である可能性が最も高い。光背や台座の豪華な装飾は、いまだ15世紀第2四半期に制作されたギャンツェのクンブム寺の壁画との関連を保持しているが、この作品では、想像力に富む多様性、生き生きとした鮮緑色のアクセント、風景の暗示といった要素に、新しいスタイルヘの変容が認められる。目をひく虹色の波立った光線は、暗い空に繊細な金色の線で描かれた雲のパターンに逆らって配され、画面上半に乱れた動きを生じさせている。画面上端を横切って、サキャ派の法系に連なる像が描かれており、執金剛からヴィルーパ、サチェン・クンガ・ニンポ、ソナム・ツェモ、中央上に小さく釈迦牟尼、タクパ・ギャルツェン、サキャ・パンディタ、パクパが並び、右隅には女尊の金剛無我女像がある。主尊のラマの傍ら、左にはチャクラサンヴァラ尊像に続いて上に黄帽をかぶった、下に紅帽をかぷった2体の大きなラマ像があり、右側にはヘーヴァジュラ尊に続いて同様のラマ像がある。これら4体のラマ像は、系譜の上でしばしばパクパからゴルチェンの間におかれる、クンチョクペル、ダクプクパ、ペンデン・ラマ、ペンデン・ツルティムにあたるラマであろう。画面左端下には上から弥勒、四臂六字観音、緑ターラーが並び、右端下にも同様に文殊、仏頂尊勝母(ウシュニーシャヴィジャヤー)、羯磨杵を持つ緑ヴァジュラヴィダーラナが並んでいる。画面下端に目を移すと、左側には、小さな吉祥天を従えた大黒天パンジャラナータが、右側には白クベーラが描かれ、中央にはラマの供養者と精巧に描かれた供物が並んでいる。伝統的主題や図像形式においてさえ、15世紀第2四半期から1500年頃までのあいだに、劇的な変化が起こっていることを、容易に理解できる。この絵画は、1500年頃のチベット中央部のサキャ派のラマ階級における絵画の発達を知らせる上質かつ重要な作品なのである。出所:天空の秘宝チベット密教美術展
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